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データ・バリデーション&リコンシリエーション(DVR)

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データ・バリデーション&リコンシリエーション

(Belsim Engineering社製”VALI”)


弊社では、ベルギーの“Belsim Engineering社”が提供するデータ・バリデーション&リコンシリエーション(DVR)用ソフトウェア“VALI”のライセンスおよび付帯するシステム導入サービスについて、日本国内での販売代理業務を行っています。プロセス産業やエネルギー産業における生産実績管理、性能監視、最適運転などを目的としたDVRの利用は従来より行われてきましたが、プラントにおけるAI技術の適用が検討される中で、データクレンジングや強化学習のためのツールとして近年新たな注目を集めています。DVRは、今後国内での急速な普及が期待される技術のひとつであると言えます。以下にDVRおよび”VALI”の概要について紹介します。

データ・バリデーション&リコンシリエーション(DVR)とは

プラントの運転は、機器や配管に設置されている流量、圧力、温度、液レベルなどのセンサーから得られる計測値に基づいて行われます。しかしながら、これらの計測値は常にある程度の”不確かさ”を伴っており、時には計器の校正不良などによって許容範囲を超えるような誤差を含む場合もあり得ます。データ・バリデーション&リコンシリエーション(DVR)は、プラントにおける対象物のモデルと、そのモデルに対する計測の冗長性を利用して、計測値の信頼性を向上(”不確かさ”を低減)させるための手法です。求められたリコンサイルドバリュー(計測対象の真値の最良推定値)は、対象物のモデルが要求する物質収支やエネルギー収支のバランスを満足する信頼性の高い値であり、このリコンサイルドバリューを運転指標とすることで、計測値だけを使ってプラントの運転を行う場合に較べて、より効率的かつ安全・安心なプラントの運転を可能とします。具体的には、プラントの生産実績管理、性能監視、最適運転、省エネルギー、未測定の内部状態の推定(ソフトセンサー)、計器異常の検知など、様々な運転管理の場面で有効活用できます。また、DVRの結果として得られる対象物のモデルは、プラントの現在の状態を正しく反映した物理モデルと見なすことができ、そのモデルを使って将来の操作に対するプラントの応答を予測することもできます。

DVRの原理の説明>>

DVR導入のメリット

DVRの導入によって、生の計測値から直接には得られないプラントの運転状態についての信頼性の高い情報が得られます。それらの情報はプラント操業の多くの場面で有効利用されています。それらのうち主なものを挙げると・・・

1.プラント性能のリアルタイムでのより正確な監視と改善

プラントや構成機器の性能を正確に把握することで、より限界に近い条件でのプラント運転が可能となり、生産量の最大化、製品収率の向上、省エネルギー等を図ることが可能となります。

図1

2.直接計測できないプラントの運転パラメータの推定

適切な物質収支とエネルギー収支のモデルを適用することにより、計測されていないか、あるいは計測することが難しいプロセスの状態変数や、物性パラメータ、反応パラメータなどを推定することが可能となります。これらのパラメータの推定値は、プラントの運転員のリアルタイム操作をガイドすると共に、プロセスに対するより深い理解と改善の指針をもたらします。

図2

3.機器の性能推定値や計器の誤差の推定値に基づく機器・計器の状態基準保全

プラントの構成機器の性能の経時変化を正確に知ることにより、適正なメンテナンス時期の決定に役立てることができます。固定床反応器の触媒交換時期の推定などにも役立ちます。また、リアルタイムでの計器の誤差の推定により早期に校正不良の計器を特定できるので、定期的に校正を実施する計器の数を減らすことが可能となります。

図3

4. データクレンジングと強化学習用モデル

近年、プラントの過去の運転データを機械学習用データとして利用して、異常検知のための確率統計モデルなどを作成したり、AIによるプラントの将来予測のための多層ニューラルネットワークの作成に利用したりといった試みが多数行われるようになって来ましたが、このようなアプローチにおいて予想される問題点として、以下のような点が挙げられます。

  • 生の測定データとして保存されている過去の運転データの中には計測されていない外乱の影響や計器の校正不良によるドリフトなど、機械学習用データとしては望ましくないデータが含まれている可能性が高いが、個別の計測値からはこのような不良データの選別が困難である。
  • 定常状態を基準とするモデルを作成する場合は、過去の運転データの中からプラントが非定常な状態にある時間帯のデータを除去したいが、どこまでを定常と判定するかの基準の設定が難しい。
  • そもそも過去の運転データは対象プラントの実行可能な運転条件の一部しかカバーしていない場合が多いので、そのようなデータに依存して作成されたモデルは、おのずと適用可能な運転範囲が限定されてしまう。

DVRは、上記のような問題に対して有効な解決策を提供します。即ち、過去の運転データについてDVR計算を適用することにより、自動的に異常な計測値を修正または除去することが可能であり、かつ生の測定データよりも信頼性の高い推定値を生成することが可能となります。また、定常・非定常の判定も、DVR計算結果の統計的な解析により推測することが可能です。つまり、生の測定データをDVR計算というフィルターにかけることにより、効果的なデータクレンジング機能を提供できると言えます。さらに重要なポイントとしては、DVR計算によって過去の運転データに対応する未測定の状態変数も推算できるので、それらの未測定の状態変数と測定値との相関をモデル化したり、積算運転時間との相関をモデル化したりといったことも可能となります。このことは、より広い運転条件範囲をカバーできるモデルが作成可能となることを意味し、このモデルを使って強化学習において不足する運転データをある程度補足することができるようになると考えられます。また、このようにして作成されたDVRモデルはリアルタイムのDVRシステムとして実装することも当然可能であり、その場合前項までに述べたDVRの様々なメリットを享受できると同時に、DVRの機能を機械学習によるモデルの機能と組み合わせることで、より高度な異常検知や将来予測の機能を達成できるものと期待されます。

DVR用ソフトウェア”VALI”の特徴

”VALI”は、Belsim Engineering社の過去30年の継続した開発の成果であり、他に類を見ないユニークな機能を備えた、DVR専用のソフトウェアです。”VALI”が備える基本機能とその特徴は・・・

図2

1.モデル作成機能

ユーザーフレンドリーなGUIを使って、物質収支だけのモデルも物質収支&エネルギー収支のモデルも容易に構築することができます。純物質の物性データベース、物性推算法、単位操作モジュールは、他の市販のプロセスシミュレータと同等の機能を完備しています。また、DVR特有のニーズに対応できるユニークな機能を備えています。

2.レポート作成機能

計算結果のナビゲーションの容易な標準のhtml出力に加え、強力なExcel Add-Inによるカスタムレポート作成機能をサポートしています。これにより、ユーザーは計算結果を自由に加工しレポーティングすることが可能です。

3.分析機能

DVRのメリットのひとつは、計算結果の全体としての信頼性に加えて、個別のリコンサイルド・バリューの”不確かさ”を定量的に評価できる点にあります。VALIのDVR計算結果の分析機能は、たとえば、主要なKPIの推定値の“不確かさ”と、それらを低減するための指針を与えてくれます。

4.リコンシリエーション・エンジン

一般にデータ・リコンシリエーションの計算は、変数の数が多くモデルが非線形であるため、コンピュータ上で膨大な数値演算を必要とします。VALIのリコンシリエーション・エンジンは、このような問題を高速で処理できるので、標準的なモデルの場合、計測値の数が3,000程度なら、2分程度で解を求めることが可能です。

5.その他の標準機能

VALIは、プラントのヒストリアンやラボシステム、在庫管理システムなどに蓄積されるリアルタイム情報の直近の一定期間(1時間、1シフト、1日等)の平均値や積算値を使ってDVR計算を行います。また計算結果のヒストリアンへの出力もよく行われます。したがって、これらの外部システムとのデータ交換のための標準インタフェース(ValiLink)を備えています。また、読み込んだデータの健全性のチェックやさらに高度な二次処理(ValiFilter)も可能です。DVR計算も含めたこれら一連のデータ処理を制御する機能(ValiEvent)は、リアルタイム性の要求されるDVR用ソフトウェアでは不可欠な機能です。

“VALI”の主な適用業務

図3VALIのプラント操業における典型的な利用形態としては、まず物質収支だけを対象とするのか、物質収支とエネルギー収支を合わせて対象とするのかにより、大きく二つに分類できます。生産管理やロス管理の場合のように、生産計画と生産実績の予実管理やロスの発生箇所の監視・定量化などが目的の場合は、主に前者の利用形態となるでしょう。一方、プロセスの性能の監視・改善やエネルギー使用量の監視・改善など、プロセスの運転方法の改善や設備の改善の指針を得ることを目的とする場合は、後者の利用形態が不可欠となります。VALIには、特にニーズの高い「生産管理」や「エネルギー管理」に直ちに適用できる業務パッケージが用意されています。

“VALI”の導入

VALIの初期導入は、経験豊富なBelsim Engineering社のエンジニアが担当します。弊社は、Belsim Engineering社の日本での窓口業務を行いますが、必要に応じてコンサルテーション業務を合わせて行うことも可能です。

VALI導入によるメリットを実証するため、まず小規模なモデルでの試用をおすすめします。また、対象プロセスの設計情報(PFD、P&ID等)およびヒストリアンに蓄積されている過去の運転データを提供頂ければ、Belsim Engineering社においてオフラインで機能の検証を行いレポートすることも可能です。このアプローチなら、最少のコストでVALI導入のメリットを評価できますので、是非ご検討下さい。

 

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